健康で長生きするために気を付けることはありますか?
最近よく「健康寿命」という言葉を耳にします。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」とされています。具体的には歩く・食事をする・トイレをするといった日常的な動作が自分自身で行え、さまざまな判断が自分でできる状態のことです。言い換えると「健康で人間らしい生活がおくれる寿命」ともいえます。しかし、誰の助けもなく日常生活を過ごせる期間(健康寿命)は、我々日本人の場合には平均寿命よりも10年程度短くなっているのが現状です。つまり、人生終盤においては何らかの障害のために人の手助けや援助を受けながら生活していることになるのです。では、援助や介護が必要となる原因や病気はどのようなものが多いのでしょうか?
今日本においては、脳卒中後遺症や認知症、さらには運動器障害(転倒・骨折・関節疾患)のために何らかの援助や介護を受けている人が大半を占めています。これらの病気やケガが高齢者に起こってしまうと、どうしても後遺症が残り自立した生活ができず、最悪の場合には寝たきりになる可能性がでてきます。脳卒中・認知症・ロコモティブ症候群が健康寿命を短くする最大要因なのです。
ですから、少しでも健康寿命を延ばすには、このような脳卒中や認知症にならないための工夫が大切になりますし、また加齢に伴う転倒や骨折、あるいは関節疾患を起こさないための予防策が重要になってきます。
脳卒中の予防は生活習慣病のコントロールが大切です
まず脳卒中にならないためには、その危険因子である高血圧、糖尿病、脂質異常症、心臓病などの生活習慣病に罹っていないことが最も大切です。もし、実際に何らかの治療を受けているのであれば、その生活習慣病を悪化させないためのコントロールが重要になります。高血圧は続けば血管を傷つけ、余分な糖と脂質は血管に溜まって動脈硬化を進行させます。ですから、動脈硬化のリスクのある人には血管年齢(血管の硬さ)や頸動脈エコー、あるいは頭部MRI検査を行って、脳血管の動脈硬化状態を調べていきます。その結果を踏まえた上で、生活習慣病の治療はもちろんですが、必要があれば今までの生活習慣の是正やその改善にも取り組んでいけるような手助けを行っていきたいと思っています。
認知症の予防と早期発見
今日本では65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症と推測されています。認知症は主に老化に伴って起こる症状であり、認知症は誰でも発症する可能性のある病気です。しかし、そのような認知症でも早期発見により病気の進行を遅らせたり、健康なうちからその予防に努めれば発症リスクを軽減できる可能性も知られています。一般にはアルツハイマー型認知症、脳血管型認知症およびレビー小体型認知症が大半を占めています。最も多いとされるアルツハイマー型認知症は、異常な蛋白質が脳に蓄積することで神経細胞が死滅し、脳が萎縮していく病気です。その根本的な治療法はいまだ確立されたものはありませんが、もし高血圧、糖尿病、脂質異常症といった血管性危険因子を同時に治療している方では、認知症の病態に悪影響を及ぼしていることもわかっています。従って、これら血管性危険因子をうまくコントロールすることも、認知症の進行・増悪においては重要な課題となっています。さらに、高齢者においては趣味や旅行を楽しんだり、あるいは地域の集いやサークルに参加することは脳活動の活性化につながるとも言われます。ぜひ認知症予防および健康寿命の延長につなげることを目標に参考にしてみてください。
加齢に伴う運動機能の低下を防ぐ
ロコモティブ症候群(運動器症候群)とは運動器の障害により、基本的な運動能力が低下している状態を示します。筋肉・骨・関節・軟骨・椎間板などに障害が起こると、やがてバランス能力・体力・移動能力などが衰え、立ったり歩いたりといった日常生活の中で行う簡単な動作が困難になってきます。日常のあらゆる動作は運動器の働きによって行われますが、加齢とともに体のあちこちに不調が現れ、運動機能の衰えも進みます。つまり高齢者はロコモティブ症候群になりやすく、転倒して負傷したことをきっかけに寝たきりになったり、体の痛みをかばううちに筋力が落ちたりして、介護が必要な状態につながりやすいのです。さらに加齢だけではなく、運動不足や食生活の極端な乱れもロコモティブ症候群に影響してきます。ですからバランス能力・体力・移動能力の衰えを少しでも予防するには、毎日の運動習慣とバランスの良い食生活は大切になります。自宅で簡単に行える「片脚立ち」や「スクワット」はお勧めですし、また毎日の生活の中にある動作、階段を使う、買い物に行くなど、運動の要素を積極的にプラスすることもロコモティブ症候群の予防につながります。
定期的に脳ドックを受けましょう
もし、脳ドックで「何らかの病気」が見つかったら、その種類や程度によって管理法や対策は異なりますが、主に以下のような点が挙げられます。
危険因子の管理
高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病は、脳卒中や認知症の重要な危険因子となります。これらの病気を持っている場合は、食事内容の見直したり(減塩)、適度な運動、禁煙、節酒などの生活習慣の改善が推奨されます。必要に応じて専門医と相談し、内服薬による治療を行うことも重要となってきます。
定期的な経過観察
すぐに治療が必要とならない場合でも、画像による経過観察が推奨されることがよくあります。これにより病変の進行状況を把握し、適切なタイミングで治療を開始することも可能となります。
専門医への受診
大きな未破裂脳動脈瘤や比較的大きな脳腫瘍が発見された場合には、やはり基幹病院への受診が強く勧められます。状況によっては低侵襲的な血管内治療や開頭手術などの予防的治療が検討されることがでてきます。
認知機能の評価
隠れ脳梗塞や大脳白質病変、あるいは脳微小出血などでは、将来的な認知機能に影響することが懸念されています。また、具体的な健忘・物忘れ、あるいは記憶力低下で直接相談に訪れる方もおられます。将来的な認知症へのリスクが懸念される場合には、定期的な認知機能検査や早期治療の導入も検討される症例がでてきます。
まとめ
脳ドックは、自覚症状が現れる前に脳の病気を発見し、将来の脳卒中や認知症のリスクを軽減することを目的とした予防検査と言えます。症状がなくともMRI検査で発見される無症候性病変の中には、後に後遺症を残すような面倒な病気を併発したり、厄介な疾病につながることも起こりますので、早期発見の意義は大きいと言えます。但し、無症候性病変の種類によっては管理法や対策も異なってきますので、病態や病状を的確に見極めることがより大切になります。どうしても、将来的な脳卒中や認知症のリスクについて不安がある方は脳ドックを受けてもらい、まずは現状を把握することが重要な予防策につながるものと考えられます。