頭痛
いつもの頭痛、我慢しないでまずはご相談ください
誰もが経験したことがある頭痛は、痛みが強いものから弱いものまで様々あります。頭痛の多くは脳に“たしかな異常”が見つからない「危なくない頭痛(一次性頭痛)」であり、CTやMRI写真を撮っても、その原因が画像には写らないタイプの頭痛です。しかし、頭痛は時として命に関わる危険なサインであったり、その前ぶれ(予兆)として出てくることがあります。特にくも膜下出血・脳出血・脳梗塞などの脳卒中や脳腫瘍、あるいは慢性硬膜下血腫や水頭症に伴う頭痛であったなら、手術や専門的な治療が必要となります。このようにある病気の症状として現れる頭痛を「危ない頭痛(二次性頭痛)」と呼びますが、このタイプの頭痛ではCTやMRIの画像検査がとても大切となります。どちらのタイプの頭痛にしろ、まずは適切な検査を行い、危険で怖い二次性頭痛ではないかどうかを確認することが重要です。さらに、慢性的な「危なくない頭痛(一次性頭痛)」で悩んでいる方々も「いつもの頭痛だから」と自己判断せず、お気軽にご相談してみてください。十分な問診やCT・MRI検査などの結果から適切に判断し、その人に合った治療法を決めていくことが大切です。
頭痛について

危ない頭痛(二次性頭痛)

頭痛という症状は多くの方々が経験したことがあると思いますが、そこまで過度に心配する必要がないタイプが大部分です。しかし、中には放っておくと命に関わる怖い頭痛があることを、テレビや雑誌で見たりしているせいもあり、“念のため病院へ行って頭の検査をしてもらおう”と思ってしまいます。
危険な頭痛の注意すべきサインとしては、突発的に起こるもの、日に日に強くなる頭痛、初めて経験するような頭痛、頭痛と一緒にめまいやふらつき、あるいは麻痺やしびれ、言語障害などが出てくるものがあります。日常生活の中で、このような危険で怖い頭痛のサインを感じたり、どうしても頭の怖い病気のことが心配な方はためらわずに脳の専門医を受診することをおすすめします。

考えられる疾患

脳卒中

突発的あるいは急な頭痛で発症する脳卒中ではくも膜下出血脳出血、あるいは脳動脈解離(脳梗塞)という病気が有名で、いずれも専門的で迅速な治療が必要となる頭痛です。また、脳卒中の多くは生活習慣病と密接な関わりがあるため、再発の可能性を踏まえると生活習慣病の治療・改善も大切な役割があります。

脳腫瘍

脳腫瘍で現れる頭痛では、朝起きがけに感じる頭痛(起床時痛)が特徴的です。その際には嘔気や食思低下なども伴いやすく、めまい・ふらつき感、手足の麻痺や言語障害、あるいは認知症状の増悪徴候も現れることがあります。

慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫という病気は、比較的高齢な方が1~2か月前に転んで頭や顔をぶつけており、じわじわと認知症状が現れたり、だんだん元気がなくなって動かなくなることで気付かれます。この病気の際にも頭痛を伴ってくることがあります。

炎症(髄膜炎など)

発熱を伴う頭痛の場合には、頭の中に炎症(髄膜炎など)が起こっている可能性があり、ほとんどがムカムカする嘔気や嘔吐も伴っていて、数日前からご飯が食べれなくなり病院を受診することにつながります。

水頭症

何らかの原因で頭の髄液がうまく流れなくなると水頭症という病気が起こってくることがあります。水頭症という病気でも頭痛や嘔気・嘔吐あるいは食思低下を伴ってくることが多いです。

危なくない頭痛(一次性頭痛)

危なくない頭痛(一次性頭痛)は日常的によくあるタイプの頭痛であり、外来を受診する人の大部分がこちらに当たります。ほとんどが命に関わることがなく、そこまで過度に心配する必要はありません。しかし、その原因や要因が複雑に絡み合ったり、慢性的あるいは不規則に起こってくることで日常生活に支障をきたすこともでてきます。このような危なくない頭痛(一次性頭痛)でも適切な診断と治療を受けることで症状を緩和することができますので、迷った際には専門医を受診することをお勧めします。

考えられる疾患

緊張性頭痛

頭痛の中で最も多いタイプであり、重苦しく感じたり、頭全体や後頭部が締め付けられるような頭痛が特徴です。一般的には中高年齢の方に多い頭痛ですが、筋肉の緊張・肩こりやストレスなども関係しており、デスクワークやドライバーなど長い時間同じ姿勢で仕事をする職業に多いとされています。

片頭痛

20~40代の女性に多く、こめかみ部を中心にズキンズキンと脈打つような拍動性の痛みで、気分不良や吐気を感じたり、光や音の刺激で悪化したり、匂いに敏感になったりすることもあります。症状がひどい場合には仕事を休まないといけないほどで、暗くした部屋で静かに寝込んでいることがあります。

群発頭痛

片方の目の奥がえぐられるように激しく痛み、目が充血したり涙がででることあります。一定期間に集中して起こるため群発性という名称がついていますが、症状は夜中から明け方に起こりやすく、比較的若い男性に多いのが特徴です。他の危なくない頭痛(一次性頭痛)よりもかなり頻度は少なめです。

脳以外の病気からくる頭痛

皆さんも感じているとは思いますが、頭痛という症状はいろんな原因・要因で起こってきます。たとえば感冒にかかった時、仕事でストレスを強く感じた時、あるいは寝不足で体調が悪い時、また女性の方はホルモンバランスの変化で日常的に頭痛を経験していることがあるかもしれません。つまり、頭痛という症状は脳の病気だけではなく、脳以外のさまざま原因や要因でも起こってくる症状なのです。また、脳や頭と近い目や耳や鼻、あるいは頸部(うしろ首)の病気やケガでも頭の痛みとして感じることがあります。

考えられる疾患

写真に写らない頭痛

アイスクリーム頭痛、飲酒後の二日酔い、薬物乱用頭痛、高血圧など

写真や検査・診察などでかわる頭痛

副鼻腔炎(蓄膿症)・三叉神経痛・帯状疱疹・中耳炎・緑内障・変形性頚椎症・大後頭神経痛・顎関節症など

片頭痛でお悩みの方へ

頭痛は大きく“2つのタイプ”に分かれます

頭痛にはくも膜下出血などの脳卒中や脳腫瘍が原因となり、症状として頭痛が生じる「症候性頭痛」と、頭痛それ自体がひとつの病気である「機能性頭痛」があります。さらに機能性頭痛には、原因となる病気がないのに頭痛を繰り返す慢性頭痛も含まれており、15歳以上の日本人の約40%に当たる4,000万人が悩まされています。また慢性頭痛の中にはズキンズキンとする拍動性頭痛が特徴的な「片頭痛」、頭全体が締め付けられるように痛む「緊張性頭痛」、片目の奥に周期的な激痛を感じる「群発頭痛」といったタイプのほか、薬の使い過ぎが原因で起こる「薬物乱用頭痛」もあります。

片頭痛ってどんな頭痛?

比較的よく耳にする「片頭痛」という疾患はわが国では8.4%の有病率と言われており、20~40歳代の勤労世代の女性に多く、男性の約4倍もの方々が日々悩まされています。一般の方は頭の片側が痛む頭痛のことを総称して片頭痛と理解していることが多いのですが、これは誤った認識です。一般に片頭痛はズキンズキンと脈打つ拍動性頭痛と表現され、頭痛の直前には閃輝暗点というギザギザした光が見えたり(前兆)、頭痛と並行して悪心や嘔吐といった不快な消化器症状を伴うことも多くみられます。また、日常の運動で頭痛が増悪するため横になることも多く、寝込んでしまう特徴があります。また頭痛時には感覚過敏となっていることがあり、普段は気にならないような光、音、匂いなどを不快に感じることもあるようです。概して片頭痛は働き盛りの人に起こりやすい繰り返す頭痛で、頭痛を自覚している間は仕事だけではなく、女性の方では家事や育児にも悪影響を及ぼすことが最近の社会問題です。

片頭痛診断のポイントは?

片頭痛は診療ガイドラインや国際頭痛分類に沿った診断基準がありますが、それにうまく分類できないものも含まれ、検査データーの異常や画像の陽性所見から判断する器質的な病気ではないことが大前提となります。ですから、「これがあったら絶対に片頭痛!」という決め手がないのが実情ですので、片頭痛の診断においては患者さんからの聞き取りや詳細な問診が極めて重要となってきます。さまざまな症状やその特徴を具体的な診断基準に照らし合わせ、必要なときには他の症候性頭痛・二次性頭痛を除外する画像検査を行った上で、最終的に片頭痛かどうかを診断していくことになります。つまり、片頭痛の診断では詳しい問診が手掛かりとなり、患者さんの中に隠れている様々な情報を引き出すことが診断の決め手につながることもあります。

片頭痛の治療法は?

片頭痛の治療は大きくわけて2種類あります。頭痛発作が生じている時になるべく早く症状をやわらげる急性期治療と、もうひとつは頭痛発作の頻度や程度を減らす予防療法です。

急性期治療

片頭痛の痛みが起こっている間に症状をやわらげる治療で、一般には鎮痛剤やトリプタン製剤および制吐剤などが用いられます。頭痛発作の重要度・強さに応じて治療薬を選びますが、例えば軽症~中等度の頭痛時にはアセトアミノフェンやロキソニン、イブプロフェン、バファリンなどの鎮痛剤が使用されます。また、中等度~重度の頭痛発作時や一般的な鎮痛剤が効かない場合には、より効果が期待できるトリプタン製剤が選択されます。さらに悪心・嘔吐を伴っている場合には制吐剤を用いることもありますが、これらの急性期治療薬はできるだけ頭痛の初期段階で対応することが大切です。但し、諸事情にて頭痛への対応が遅れ痛みのピークを過ぎてしまうと、思ったほどの鎮痛効果が実感できない場合もでてくることがあります。

予防治療

片頭痛の発作が月に2回以上あるいは生活に支障をきたす頭痛が3日間以上続く場合には予防治療の導入がすすめられます。そうすることで頭痛の発生頻度や程度を減らし、日常生活への支障度を軽減させることが可能になります。実際に予防薬として用いられる薬剤にはバルプロ酸、ロメリジン、プロプラノロール、アミトリプチンなどがあり、頭痛がなくても定期的に服用しなければなりません。また、これらの薬剤は「てんかんや高血圧」、「うつ病」などの治療薬でもあり、片頭痛の病態に沿って開発された薬ではありません。ですから、その有効性にも十分なエビデンスがなかったり、あるいは副作用の面から使いづらい薬など課題もありました。そこで最近登場したのが全く新しいタイプの片頭痛予防薬となります。
新しい片頭痛予防薬、CGRP関連製剤の特徴
近年、片頭痛の病態にカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)という神経伝達物質が深くかかわっていることがわかってきました。感覚神経のひとつである三叉神経が何らかの原因で刺激されると、この神経先端からCGRPという神経伝達物質が分泌されます。このCGRPという物質は脳の表面にある血管を拡張させ、血管周囲に強い炎症を惹起させます。そうするとさらに別の三叉神経をも強く興奮させ、多くのCGRPを分泌・排出させる悪循環サイクルに陥り、神経の興奮が大脳全体に伝わり片頭痛発作が起こると理解されています。新しい片頭痛予防薬であるCGRP関連製剤は、このCGRPの働き・機能を特異的にブロックして、片頭痛発作を起こさせないようにしてくれる理にかなった薬剤です。現在、日本では3種類のCGRP関連製剤が使用可能ですが、いずれも皮下注射薬になります。2021年4月にガルカネズマブ(商品名:エムガルティ)、次いでフレマネズマブ(商品名:アジョビ)、エレヌマブ(商品名:アイモビーグ)が日本でも使用できるようになりました。これらCGRP関連薬剤は副作用も少なく効果が長続きするという特徴があり、基本的には月1回の注射で片頭痛発作の予防効果が期待されています。また効果が現れるのも比較的スムーズで、注射後1週間目から優れた効果が確認されるケースもあるようです。一方で、CGRP関連薬剤はすべてモノクローナル抗体薬なので、内服薬のように簡単に化学合成されるものではないため大量生産が難しく、今はまだ高額な注射薬となっています。
片頭痛の治療においては、患者さんの症状・重症度や希望に合わせて薬剤を調整することがあります。これまで頻回に片頭痛発作を繰り返していた患者さんでは治療薬の選択肢が少ないことが問題でしたが、CGRP関連製剤の登場により極めて効果的でかつ忍容性の高い選択肢が広がる形になってきました。経済的な負担度が懸念されることはありますが、片頭痛発作に対する優れた予防効果が次々と実証されていますので、より快適な日常生活の実現や仕事・家事への負担を容易に減らすことにもつながります。頭痛という症状は非常にありふれた症状ですので、患者さん自身が「たかが頭痛」と考えて病院受診をためらうケースも見受けられます。日常生活に支障をきたすような片頭痛で悩んでいる方は、一度ご相談してみてください。

子どもの頭痛

子どもの頭痛も決して珍しい症状ではありませんが、ご両親にとっては子供が“頭が痛い”と言い始めるとやはり心配になると思います。幼児~小学校低学年であれば、風邪をひいて熱があり、それに伴い頭痛を訴えることが多かったり、あるいは頭をぶつけたり、蓄膿症(副鼻腔炎)中耳炎などにかかると頭痛を訴えたりすることもあります。これらはすべて何らかの病気の症状として頭痛が生じる、危ない頭痛(二次性頭痛)ですが、“命に関わる怖い頭痛”は大人に比べてはるかに少なくなります。しかし、子供たちが高熱を出し、元気がなくなればやはり不安ですので、小児科や病院を受診することはやむを得ない状況だと思います。
逆に、そこまでひどくない頭痛や、あるいは熱があっても比較的元気な場合には、まずは鎮痛剤や解熱剤などで様子をみることもひとつの方法かもしれません。他方、小学校高学年~中高生になると、大人と同じように1割程度の生徒さんが慢性的に頭痛を抱えているという報告があり、片頭痛緊張性頭痛の割合が少しずつ増えてくるようです。しかし、大人と比べて両者をはっきりと区別することも難しく、心配であればかかりつけの小児科医や専門医などに一度相談する方がいいかもしれません。
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早期発見、予防のためにも定期的に脳の健康診断をおすすめしています。