認知症
- 認知症への関わり方、そして寄り添い方 -
わが国の高齢者は年々増え続けており、2025年には総人口に占める65歳以上の割合は30%以上になると見込まれています。そのうち約700万人、おおよそ高齢者の5人に1人が認知症になるものと推察されています。今後は認知症への対策や対応が今以上に重要な課題になっていくと予想されています。
認知症は誰にでも起こりうる脳の病気ですが、認知症というと誰もが“物忘れ”をイメージする方がほとんどだと思います。しかし、実際にはその時の記憶が消えてしまうだけではなく、より知的な理解力や判断力にも大きく影響を与えますので、社会生活にいろいろ支障が出てくることになります。認知症は早く気付いて対応することでその症状を軽減できたり、進行を遅らせたりすることができます。さらに、認知症はその当事者や家族だけの問題だけではなく、今では地域を取り巻く社会問題として捉えることが重要になっています。
たとえ認知症になったとしても、我々は最後まで自分が暮らしてきた場所や家で過ごしたいと多くの方は思っていますし、家族もまた大部分はそれを支えたいと考えていると思います。しかし、そのような中でも時として認知症の多彩な症状に戸惑ったり、あるいは問題行動に振り回されてしまうことがでてきます。そういう場合にはどのように対応したらいいのか、誰に相談したらいいのかなど、よくわからないという声が多く聞かれます。認知症の方やその家族が住み慣れた地域においては、市民の皆さん一人ひとりが認知症のことをより理解することが大切ですし、そうすることで社会的な支援やサポートにも結びつけやすくなります。当院では多くの方に認知症に対する理解をさらに深めていただき、穏やかに笑顔で暮らせる地域の環境づくりをお手伝いしていきたいと思っております。

どのような症状が現れたら、病院受診を考えた方がいいのか?

認知症の初期の段階では、加齢による物忘れとその区別が難しいことが多々あります。ひとつの目安としては、たとえ物忘れがひどくても忘れていることを患者さん自身が自覚している場合には、加齢による物忘れ(生理的健忘)の可能性が高いかもしれません。しかし、仕事や家事など普段やってきたことでミスが増える、お金の勘定ができなくなる、普段慣れている道で迷ってしまう、イライラすることが増え怒りっぽくなる、現実には見えないものが見えるなどのサインが出てきたときには、初期の認知症を疑ってもよいかもしれません。

物忘れがひどくなった時

「何度も同じ話をしてしまう」「つい先ほど、話していた内容を覚えていない」「置き忘れが増え、常に探し物をしている」「日付や曜日がわからなくなる」など、目に見えて短期記憶や理解力が低下する症状が出ることがあります。

今までできていたことができなくなる時

毎日通いなれたはずのお店への行き方がわからなくなったり、また車の車庫入れの際にぶつけたりすることが増えたり、これまで当たり前にできていたことができなくなる場合には注意が必要です。

イライラ感や情緒不安定が増えてきた時

これまでは気にならなかったちょっとしたことに対してイライラすることが増えたりはしていませんか。以前よりも情緒が不安定になっていると感じられる場合も、認知症の初期症状の疑いがありますので注意してください。
上記はあくまでも一例です。当てはまるものがあったり、それに近いようなことで心配な場合にはかかりつけ医に相談したり、あるいは近くの地域包括支援センターに相談してみてください。

病院受診を聞き入れてくれない時、どう対応したらいいのか?

「最近、何かおかしい」「もの忘れがひどいようだ」と家族が異変に気づき、認知症の相談のために病院に連れて行きたくても、なかなか本人には言い出しにくいことがあります。また、本人が病院受診を嫌がったり、あるいは怒り出したりすることも比較的よく見られる光景です。本人にとっては「おかしくないのに、なぜ病院に行かなければならないのか」という思いがあるようです。その気持ちを無視して嘘をついたり、無理やり病院に連れて行ったりすると、家族との信頼関係が崩れるだけでなく、医師や看護師も「一緒になって私を病人にしようとしている」などと思い、ますます病院を嫌なところだと思うようになってしまいます。
このような状況での対処法は、本人の性格や状況によっても少し異なりますが、「自尊心を傷つけないこと」が大切です。例えば「最近(あなたの)行動は少しおかしいから、病院へ行きましょう」と言うよりも、今までの物忘れの例を挙げながら「治る物忘れもあるので、早めに専門家に診てもらいましょう」と勧めたほうが、本人も抵抗なく受診することができることもあります。その際には「家族が心配しているから、家族のためにも診てもらってほしい」と、伝えるようにしてください。また「たまには健康診断を受けよう」と医療機関に連れて行く、風邪や頭痛などよくある軽い症状をきっかけに医療機関を受診し、その際に認知症についても一緒に相談したりする方法もあります。また家族以外の仲のいい友人などに「いい病院があるよ」などと声をかけてもらったり、さらに気心の知れたかかりつけ医から専門医を受診するように話してもらうことも一つの方法かもしれません。

認知症への接し方は、どのようにすればいいのか?

認知症ケアにおいて介護のあり方はとっても重要です。本人の気持ちに寄りそう介護は、薬物療法以上の効果を示すことがありますので、認知症になった本人の気持ちや困った言動や行動がなぜ起こってくるのかを理解しておくと、その後にどう対応することがより大切なのかがわかりやすくなります。
認知症になると失敗することや対処できないことが増えてきますが、初期には本人もそのことを自覚しており、不安や苛立ち、恐怖を感じているものです。そんな時に叱ったり、強い口調でたしなめたりすると自尊心が傷つけられ、気分が落ち込み意欲を失い、引きこもりや不眠あるいは妄想や暴力につながることがあります。そこを認識しながら心穏やかになれるようなサポートができれば、本人の問題行動が改善し、介護する人の負担も軽くなるかもしれません。

基本は“信頼関係”を築くこと

認知症をわずらうと、以前よりも物事を上手く行うことが難しくなってしまいます。しかし、認知症の初期ではその事を本人は理解しています。「以前の様に上手くできない」と感じていますが、「それを言い出すのは恥ずかしい」「これは年だからしょうがない」「家族の手を煩わせるのではないか」などと考えています。たとえ親子であっても、やはり自分の弱みを他人に見せるのは、恥ずかしいものがあります。ですが、心のどこかでは「助けて欲しい」と思っており、さりげない気遣いや手助けを望んでいるのです。本当は助けて欲しいけど言い出せないジレンマの中で、家族など身近の人に失敗などを怒られることが続けば、不安感や恐怖感などから強いストレスがかかり、精神的に不安定になります。そうなると、失敗しても取り繕ったり、すぐ怒ったり、落ち着きがなくなったり、幻覚や妄想が出現します。周囲の人にとっては慌てて取り繕いを口にする言葉が嘘をついているように見え、お互いの信頼関係が揺らいでいくこともあります。本人が安心して落ち着ける場、雰囲気作りを行ってストレスをかけないよう心がけるだけで、認知症の症状や問題行動などを和らげることができるかもしれません。

よい感情を残すようにする

認知症が進行してくると物事の事実関係は忘れてしまいますが、その時感じた感情は心に長く残っています。「失敗した事柄」は忘れてしまい「怒鳴られた・怒られた」という感情だけが残ります。「あの人は怖い人・すぐ怒る人、だから嫌い」などという感情だけが残ってしまい、お互いに信頼関係を築くことが難しくなってしまいます。高圧的な言葉や態度は、本人に精神的な苦痛を与えることになります。また、理解してもらおうとあれこれ説明するよりも、やんわりと優しく接することがいいことが多くあります。私たちも難しい話しよりも、ちゃんと自分の話しを聞いてくれる方のほうが、接しやすいのは同じだと思います。

本人のペースに合わせる

思考力や動作が遅くなるため一度に処理できる仕事量が減ってしまい、何をするにも時間がかかってしまいます。ですが何も出来ないわけではないので、急がせたりせずに本人のペースに合わせましょう。他にも、認知症は「そのエピソード自体が記憶にない」という物忘れのため、「記憶にないことは知らない、自分がやったんじゃない」と考えます。私たちも身に覚えのないことを注意されても、「記憶にない事(自分はやってない事)をいくら言われても、知らないものは知らない!」と腹を立てますよね。本人が知らない・違うと言ったら、事実と異なっていても、本人の中では嘘や作り話をしているわけではないので、深く追求しないようにしましょう。本人の自尊心や感情を傷つけないことも大切です。
認知症が進行するとさっき質問したことを忘れてしまっており、同じ質問を何度も繰り返します。そのため家族や周囲の人たちをいら立たせたり、煙たがられる場面も出てくるかもしれません。しかし、本人は何度も同じ質問をしているという認識はないので、どうして家族がイライラしていたり、怒ったりするのが理解できません。ですので、家族や周囲の人にとって大切なことは「忘れてしまうのは病気である」ということを理解してあげて、本人の気持ちに寄り添った対応を心がけることがより大切だと思われます。

身近な人が認知症と向き合うための心構えは?

認知症に伴う介護は突然に始まることが多く、介護者はその覚悟や準備もないままに、いきなりこれまでの生活からの変化を強いられる状況があります。家族が要介護状態になったショックはありますが、何から手をつければいいのかわからず、戸惑いでパニックになったり、仕事に支障が起こるなど介護には当初より大きな精神的な負担がのしかかってきます。中には勤めていた会社を辞める「介護離職」をする人も少しずつ増えてきているのが現状だと思います。
認知症に対する介護が始まれば、ほとんどの方は身体的・精神的な負担が重なり「介護疲れ」を感じていきます。本来ならば、家族間の協力や近所や地域の助けがほしいところですが、近所や地域との交流が薄れ、親族との関係も疎遠になっている現代社会では、家族介護は周囲から孤立しやすくなります。また、介護をきっかけにそれまで表に出ていなかった家族間の問題などが表面化するケースもあります。次第に主たる介護者の孤立が深まり、閉塞感を強く持つようになると介護者の体や心のバランスが崩れ始め、精神的に追い詰められていきます。そして「介護うつ」や「介護放棄」といった危機を迎える可能性が出てくるのです。これらネガティブな出来事は、逃げ場のない介護生活をしている介護家族の誰にでも起こり得ることですので、認知症の介護を行う上では下記に示す「心の負担を軽くする心得」を頭に入れて対応することがお勧めです。

頑張りすぎないこと

認知症の介護にたずさわる家族はその関わり方の対策を学び、ご本人のために熱心に介護されていることが多いのですが、しばしば介護者ご自身の疲れや苦しみがないがしろになっています。また、なかなか避けられない生理的な老化現象をご自身の介護努力不足と関連付けて、必要以上にがんばってしまう様子もみられます。過度ながんばりの裏には、元気なままのご家族であってほしいという愛情と、それが叶わないかもしれない悲しみ・不安が横たわっていることがあります。その気持ちを見つめつつ、あるがままを受け入れて、がんばり過ぎなくていいんだと思うことがより大切かもしれません。

一人で抱え込まない

「他人に任せることが不安」「認知症を知られることに抵抗がある」など、様々な思いで認知症介護をおひとりで抱え込まれるケースも少なくありません。医療が進歩した現在は介護が長期にわたることも多く、介護は一人きり、一つの家族では抱えこめなくなっているのが現実かと思います。多様化している現在は外部サービスなどに介護の一部を任せることはむしろ望ましい姿なのです。初期の頃から同じ悩みを持つ仲間や家族会などとつながりをもちながら、できるだけ抱え込まない意識を持ち続けましょう。

弱音を吐くこと

「介護は家族への恩返し。やりがいのあるもののはず」と、明るく元気にふるまい、ご家族の介護の愚痴や弱音を吐くことを許さない方もいます。でも、きれい事だけではすまないのが介護ですので、どろどろとした不満ややりきれない気持ちは、あってあたりまえなのです。時には介護家族会に参加したり、信頼できる友人に話を聞いてもらうなどして、弱音や愚痴を少しずつ「きちんと吐き出す」ことも、実は認知症の介護にはとても大切なのかもしれません。

人と比べない・過去と比べない

認知症の進み方や症状の現われ方は千差万別です。「あの人よりも若いのに」「同じ時期に発症したのに」と他のケースと比べるのはあまり意味がないうえ、不幸の始まりです。他のケースを参考にするのは悪いことではありませんが、介護に正解はありません。また、「昔はこんな風ではなかった」「この間までできていたのに・・・」と過去のご本人と比べてしまうことがあります。ご本人の症状や認知症の進行度が、介護者の介護の良し悪しを反映・評価するものでもありません。介護者ご本人が、ご本人らしくいられる介護が最も的確な介護だといえます。

いつか終わりが来る

認知症は実は進行していくことがほとんどです。どのような症状にも「終わり」があります。道迷いで目を離せなかった人も、歩くことが難しくなれば症状はなくなっていきます。妄想や幻覚などの行動・心理症状も、時が来ればそれすらも失われていくことになっていきます。目の前の苦しみがいつ終わるのか、本当に終わるのかわからない辛さは確かにありますが、「いつかは終わるもの」と気を長くもつことで、少しは楽になるのではないでしょうか。
「認知症のせいだとわかっていても、つい感情的になってしまう」、「そんな自分が情けなく、疲れ果ててしまった」、先の見えない不安が多いのが認知症の介護です。こんな気持ちになることは決して不思議なことではありません。患者さん自身を大切な家族だと思っているからこそ苦しくなるのだと思います。「あんなにしっかりしていたお父さんが、お母さんが、配偶者が・・・」受け入れられないのは介護者自身かもしれません。平均寿命が延びたことが、認知症と向き合わなければならなくなった弊害かもしれませんが、年を取ると多かれ少なかれ「物忘れ」と向き合わなければならなくなります。自分自身のことでもあるいは介護の立場であっても、それを辛いと思うより「笑い」に変えるということが大切かもしれません。笑いが増えてくると認知症があっても、その家族は幸せな気持ちになる時間が増え、癒されてことが増えてくると思います。

認知症の介護にはどのような支援・サポートがあるの?

認知症の方が感じる「生きづらさ」や介護する方が感じる「ご負担」は、日常生活を過ごしていくことが難しくなるほどの大きな問題に発展することがあります。このような「生きづらさ」や「ご負担」は幾つかの支援サービスを利用することで、ある程度軽減できます。ここでは認知症のご家族が利用できる支援サービスをご紹介します。

介護保険システムによる支援

  • 65歳以上で日常生活の介護や支援が必要になった方、または40~64歳までの医療保険加入者で特定疾患患者(脳卒中後遺症や認知症を含む)が受けられるのが介護保険サービスです。
  • 地域包括支援センターや市区町村の窓口で申請した後、かかりつけ医や担当医に主治医意見書を記載してもらい、介護認定審査会にて「要支援」「要介護」と認定されれば、サービスを受けることができます。
  • 介護保険には様々なサービスがあるので、どのサービスを利用すればいいか迷われるかもしれません。このような悩みは「ケアプラン」を立てることで解決できるでしょう。「要支援」の方であれば、地域包括支援センターの担当者が、「要介護」の方であればケアマネージャーがプラン作成の支援をしてくれますので、まずは相談してみてください。

自宅で受けられるサービス(居宅サービス)

居宅サービスは要介護・要支援者が現在の居宅に住んだまま提供を受けられる介護サービスです。居宅サービスは種類が多いため、さらに「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」に分類して、各サービスの内容を決めていきます。
訪問サービス
自宅で暮らす要介護者・要支援者を訪問して、買い物や掃除などの生活支援、食事や排せつなどの介護、健康管理や衛生管理指導などの看護、リハビリ・入浴などを提供するサービスです。
通所サービス
自宅で暮らす要介護者・要支援者に通いのかたちで、施設内で日中を過ごしてもらい、食事や排せつなどの介護、健康管理や衛生管理指導などの看護、リハビリ・入浴などを提供するサービスです。よく利用されている居宅サービスが、いわゆるデイサービス(通所介護)デイケア(通所リハビリテーション)となります。
短期入所サービス
要介護者・要支援者を施設に一定期間施設内に受け入れて、食事や排せつなどの介護、健康管理や衛生管理指導などの看護、リハビリ・入浴などを提供するサービスです。(短期入所生活介護・短期入所療養介護)

施設で暮らすサービス(施設サービス)

施設サービスとは「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」に入所した要介護状態にある高齢者に対して提供されるサービスです。特別養護老人ホームでは主に食事・排泄・入浴などの介護が提供されるのに対して、介護老人保健施設や介護療養型医療施設、介護医療院では、医学管理下における介護やリハビリ、療養上の管理や看護などのサービスも提供されています。
ショートステイ
短期間、施設で生活・宿泊をして、食事や入浴などの日常生活の支援を受けられます。
介護老人保健施設
自宅での生活を目指す方のために、日常生活を医療的に支援する施設です。
特別養護老人ホーム
自宅での生活が難しい方のために、暮らしの場として生活を支援する施設です。
グループホーム
認知症の方が少人数で共同生活を送り、スタッフの支援を受けながら暮らす施設です。
認知症の支援や介護は長期戦になることが多いので、介護で疲れないように賢くサービスを活用しながら、ご本人や介護するご家族の負担を可能な限り減らしていきましょう。

かかりつけ医と主治医意見書

かかりつけ医とは、本人の持病をよく知り日頃の健康管理のことも相談でき、病気になった時には最初に連絡できる地域のお医者さんのことです。高齢になれば体のいろんな機能が低下してきますから、かかりつけ医をもっておくことはとても大切です。何かの症状が出て何科を受診すればいいのか迷ったり、専門的な治療が必要になったりした時も、かかりつけ医が適切な専門医や専門医療機関を紹介してくれます。また、急病時には入院先へつなげたり、また退院後は在宅ケアの相談もできますので、患者本人とその家族の相談相手になってくれる存在でもあります。また、かかりつけ医からの情報はケアプランの立案に役立てられますし、リハビリテーションなどの医療系介護サービスを利用するときは医師の指示書を作成してくれます。かかりつけ医はこのように長い期間お世話になる介護生活のキーパーソンの一人でもあるのです。

何のために「主治医意見書」を記載するのか?

介護保険システムによる支援サービスを実施するには介護度の認定を行う必要があります。その要介護度の認定作業には、全国一律の様式を用いて医師が記載する主治医意見書が必要になってきます。これは「介護の手間がどの程度になるのか」を医学的観点から判断するためです。本人の疾病や負傷の状態などについてよく知る主治医に意見書を書いてもらうことが一般的です。主治医意見書を記載するに当たっては、病名や症状のほかにも日常生活の自立度や認知症の症状の有無、筋力の低下などについて身体の細かな状態まで幅広く記入する項目があります。従って、現在の本人の状況をよく理解した医者に書いてもらわなければなりませんので、それにはかかりつけ医が適任ということになります。

かかりつけ医がいない場合は?

以前に診察や投薬を受けたことがあり、患者さんの心身の状態を少しでも把握しているお医者さんがいる場合には、その先生に主治医意見書の作成を依頼することが可能かもしれません。また、日頃複数の病院や診療科を受診している場合には、本人の心身の状況を総合的に知ってくれている医師であれば、意見書を記載してくれるかもしれません。しかし、なかには本人の実情をよく知らないという理由で、意見書の記載が断られることもありますので注意してください。もし、意見書を書いてもらう医師を新たに探すときには、地域の情報をよく知っている地域包括支援センターに相談することもいい方法だと思います。その際には本人の実情が詳しく医師に伝わっていくことが不可欠ですので、事前に意見書を書いてもらいたい旨を病院側に伝えておき、診察時には伝えるべき内容や要点を準備しておくとよいでしょう。なお当院では、そのような方のために可能な範囲で主治医意見書の記載をお手伝いしておりますので、必要があれば一度ご相談ください。

地域包括支援センターの機能と役割

皆さんの中には「地域包括支援センター」という言葉を聞いたことがある人はいるかもしれませんが、どう活用していけばいいのか?どんな相談をするところなのか?わからない方、疑問を持っている方がいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、今回は地域包括支援センターの業務内容や、介護を考え始めた際の上手な使い方について少し解説していきます。
地域包括支援センターは、介護・医療・保健・福祉などの側面から高齢者を支える「総合相談窓口」のような存在です。専門知識を持った職員(保健師・社会福祉士・ケアマネージャー)が、高齢者が住み慣れた地域で生活できるように介護サービスや介護予防サービス、保健福祉サービス、日常生活支援などの相談に応じており、介護保険の申請窓口も担っています。このような支援センターは各市町村が設置主体となり、センターを直接運営しているケースと自治体から委託され、社会福祉法人や医療法人などが運営しているケースもあります。なお、人口2~3万人の日常生活圏域(一般的に中学校区域)を1つの地域包括支援センターが担当していますので、宗像市の場合には下記に示す6か所に地域包括支援センターが設置されています。
地域包括支援センターを上手に活用することは介護予防の早期着手となり、介護に対する「備え」をすることができます。また、自分がやるべきことの道筋が概ね見えてきますので、介護が始まった時にも慌てることなく、心の負担も軽くなることにつながります。介護はいつ終わりが来るかわからなく長期になることもあります。介護する人も疲れが出るとご本人に辛く当たってしまったり、少し乱暴な言動・行動になることもあるかもしれません。そういう場合にはショートステイやデイサービスなどを使って、ご本人と介護者が少し距離を置く時間を持つことが大切になることもあります。また、最近では独居生活や夫婦だけで暮らしている高齢の親御さんの件で、遠方で暮らす子供さんが地域包括支援センターを介して介護相談をする機会も増えてきているようです。以上のように地域包括支援センターは「高齢者のなんでも相談窓口」ですので、何か困ったことがあれば、各地区の地域包括支援センターにご相談してみてください。なお、当院でも最寄りの地域包括支援センターや社会福祉協議会と連携して、ご本人やご家族のサポートをしております。ご心配なことがありましたら気軽に受診して医師や看護師にご相談ください。
名称 電話番号
吉武・赤間・赤間西地区地域包括支援センター 0940-32-2235
自由ヶ丘地区地域包括支援センター 0940-72-6707
河東地区地域包括支援センター 0940-33-2755
南郷・東郷地区地域包括支援センター 0940-62-6514
日の里地区地域包括支援センター 0940-62-5030
玄海・池野・岬・大島地区地域包括支援センター 0940-36-9001